【完】ヤンキー少年とコヒツジ少女
「狼はさ、性格もいいし。気配りもできるし。いい奴なんだけど。顔のせいで怖がられてあんまり友達出来なかったんだよな。でもさっき店の外から小梛さんと話してる姿見て少し安心した。あんな狼の姿初めて見たから、すげぇ嬉しかった。」


にっこりと笑う赤咲くんは。


本当に剣崎くんのことが心配だったんだろう。


実際に自分で剣崎くんと関わって。
赤咲くんの話を聞いて。
自分の中で剣崎くんの姿がかたどられていく。
正しい形で、本当の剣崎くんの姿が。
ひょっこり、顔を出した。


オレンジ色の髪の毛はお店が大好きな証拠。
目つきが悪くなるのは照れ隠し。
爪が整っているのは美味しい料理を作るため。


字は丸くてかわいくて。
街で評判のケーキ屋さんの息子さん。
将来の夢はケーキ屋さんを継ぐことで。
真っ直ぐで、心優しい、男の子。


「持って来たぞ、ってなんだ?」


不思議そうにしている剣崎くん。
私と赤咲くんは顔を見合せて笑った。


さっきのことは内緒だよ。
剣崎くんには秘密です。


今日、剣崎くんの心に触れた気がした。
もっと、知りたいって貪欲になった気がした。


食べたショートケーキはやみつきになって。
ひとつもらったオランジェットは。
少し甘くて、ほろ苦い。
まるで、剣崎くんのようだった。



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