【完】ヤンキー少年とコヒツジ少女

ありったけの声で叫ぶ。
お願い、届いて……、剣崎くんっ。


「小梛に触るな!」


掴まれていた腕の圧力がなくなる。
鈍い肌の触れる音が辺りに響き渡り。
気付けば、さっきまで腕を掴んでいた男の人が地面に倒れていた。


「大丈夫か、小梛!!」


ふわり、甘い匂いがする。
ケーキの、オレンジの匂い。
剣崎くんの、匂い。


「け、剣崎くんっ……!」


「どこか殴られたのか!?なんで泣いてるんだ!?」


さっきよりも泣きじゃくる私を見てあたふたしている剣崎くん。
いつの間にかさっきまでのナンパ男たちはどこかへ去っていって。
その場には私と剣崎くんしかいなかった。


「だ、大丈夫……。」


安心したら涙でてきちゃった。
緊張の糸が切れたのか。
私はその場にしゃがみこんだ。


本当に、来てくれたんだ。
呼んだら本当に駆けつけてくれた。
……ヒーローみたい。


「怪我はないか?本当に大丈夫か?」


汗を額に滲ませて眉を下げてて。


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