【完】ヤンキー少年とコヒツジ少女
「ここまで連れてきてくれてありがとう。
あなたは学校に行っていいわよ。」
「はい。」
看護師の言葉を聞いて俺はその場を後にしようとした。
ドアノブに手をかけた時、助けた彼女の引きとめる声がした。
「あ、あの……。」
振り向いて姿を見れば。
起き上がってポケットに手を突っ込んで何かを探している。
体調悪いのになにしてるんだ……?
探していたものが見つかったのか。
彼女は震えた手で俺に白色のハンカチを差し出した。
「さっき……手を、怪我してましたよね?
これ使って下さい……。」
「えっ。」
確かにさっき、彼女を抱えて電車から降りる時。
勢い余って手の甲を切ってしまった。
血が少し滲む程度で、抱きかかえられていた彼女は気付いていないと思っていたのに。
予想外の出来事にたじろぐ。
「助けて下さって、ありがとうございました。」
焦点のあっていない目線をこちらに向けて。
ぎこちなく笑う彼女に。
どうしてか、胸が熱くなった。
ハンカチを受け取り、足早に医務室を後にした。
それでも上昇した心拍数は収まりそうにない。