かけがえのない人


なんとなく、いつもと違う気がした。

それはすぐに気づいた。
机の棚にあったあの本がなくなっていた。

さっきまで上機嫌だった私は一気に冷めた。

そこら中を探してもなくて、もしかしたら本棚のほうにうつしたのかと思ったけれどそっちにもなくて。

再びわたしはリビングに戻った。

「あの机の棚にあった本知ってる?」

少し怒り気味でそうきいた。

「ああ、あの本ならさっき俺が整理していらない本と一緒にしばったよ。あれって中学のときの本だろう?もう過去は忘れなさい」

「勝手なことしないで!!!」

そう叫ぶとわたしはしばった本がまとめておいてあるところまでいって全部ひもを切って探した。


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