かけがえのない人


「それでとうとう離婚になって。そのときどっちにつくかって話になった。俺はもちろんお袋を選んだ。彩香ももちろんこっちにくると思ってた。でもいろいろ考えたら親父につくほうが最善だと考えられた。経済的にも安定してるし、車いす生活ともなると学校までいくのに車を運転しないといけないけど、お袋はできない。それに車いすからベッドにおろしたり、そこから車いすにあげたりするのには、男の力じゃないと無理だったから。だったら俺がやるっていったけど、中学生だし無理だろうってなった。
親父は親父で仕事をちゃんと抑えて送り迎えもするし、ちゃんと食事とかも作るってお袋と約束した。だから俺はお袋についていって、彩香は親父のほうに残った。それで俺は、お袋の旧姓である根岸になった」

「・・・」

「お前が、お前と北見ってやつが俺たち家族を不幸にした」

バクバク心臓が早く動いてる。

こんなにも恨まれていたのかとはじめて知るくらい、航の言葉は冷たかった。


それから航は今までのことを話し始めた。




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