かけがえのない人
「こんなに早くばれたのも計算外。でもばれたら仕方ない。お前は、図書室に通うことが罪滅ぼしだと思ってたかもしれないけど、俺からしたらそんなのなんの罪滅ぼしでもないね。あの本が、彩香にとってどれだけ大切だったのか知らないだろ」
「・・うん」
「あれはな、彩香の小学生のときの大親友だった子からもらった形見なんだよ」
「かた、み・・」
「その友達は病気だったんだ。小児がん。その子と彩香はすごく仲良しだった。その子が治療のために入院生活になってからも彩香は毎日のように病院に通ってた。そのときにその子からもらった本なんだよ。その子からもらった唯一のものなんだよ」
泣くしかくなんてわたしにはないのに、気づいたら涙が流れていた。