かけがえのない人


「だから、・・・」

そういって言葉に詰まった航。

「だから?」

「だから、嫌いになんてなれないんだ」

「え?」

「はじめは、ほんとうに殺したいくらい憎かった。あのとき、彩香に本のことを聞いた時、山瀬愛結だけは許さないって思ってた。近づいたのだって、本性を知るためだった。1年生のときに観察した範囲では、友達もいて、明るくて、放課後は遊びたい気持ちだってあるだろうに毎日図書室にかよって。わるいところなんてなさすぎて。人違いなんじゃないかって思った。でも、見かけはわからないから、自分が実際にかかわってみようって思ってそれで近づいた。
でも、それでも、愛結はやっぱりいい人だった」


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