かけがえのない人
「あの、これ」
そういってあのときの本をとりだす。
「これって・・・」
「うん。あのとき、わたしが投げた本。雨に濡れちゃって破けちゃったところもあったり、汚れちゃったりしちゃってごめんなさい」
「あれから、ずっともっててくれたの?」
「うん、この本をみて彩香を忘れないようにしてた。これはわたしの罪でもあったから」
「愛結ちゃん・・・やっぱり、愛結ちゃんは優しいよ。ふつうこんなボロボロな本捨てちゃっててもおかしくないのに」
「この本だけは、捨てられなかった。でもこの前航から親友の形見だってきいてなおさら捨てなくてよかったって思った」
そういってわたしは彩香の手に本をおいた。