かけがえのない人


わたしの手を離れるときに感じた重さはずいぶん軽くなっていた。

長かった。

あのとき、投げ捨てた本を拾いにいったときから、この本の重みに耐えらえれなくなったときがたくさんあって。

でもこうして、彩香に返すことができた。

彩香は本を受け取るとすごく大事そうに抱きしめた。

「愛結ちゃん、ありがとう。持っててくれて」

やっぱり彩香は強い。こんなこと普通いえない。

彩香は中学のときから誰よりも大人で強かった。

そして、いまでもそれは変わらない。

本当はつらいことだってたくさんあるはずなのに、そんなの微塵も感じさせない。


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