生意気オオカミの虜
奇跡はあった。
それを喜ぶべきかどうかは悩む。
意識を取り戻した私は凛の声に三途の川を渡らずに済んだ。
でもそれはまだ内緒にしておこう。
「 羽奈っ 」
うん、何?
「 ごめん、羽奈… 」
ごめん? やだ、凛が謝ってる~
明日は雨ね、絶対雨だよ。
両親達と頼は担当した医師に話を聞いていた。
私の体は肋骨が折れた事以外は無事。
ただ額右側に大きな裂傷と口の中も切っているためしばらくは話せないかもしれないと。
今のところ命ありで安堵した両親達と頼。
私の手を握りしめて祈っているかのような凛。
凛…
「 俺はやっぱりガキだった… 羽奈の事で頭いっぱいすぎて背伸びしすぎてたかもしんねぇ 」
今さら?
でも、それに気づいたのが立派でしょ。
成長したじゃん。
「 羽奈… 俺は一生羽奈のもんだから、それだけは覚えてて 」
凛の切なげな決意?
そんな風に聞こえた、おでこにキスした凛の声はそこで消えてしまった。
夢かと思った。
いつもいつでも聞いていた凛の声がどこからも聞こえない。
凛…… ねぇ 凛…… 声が聞きたいよ。