副社長と恋のような恋を
「俺はもう独立しています。俺が誰と付き合おうが自由です。彼女は俺にとってとても大切な人です。いずれはと思っています」

 いや、私たち付き合っていませんという訂正がまったくできない状況だ。売り言葉に買い言葉なんだろうが、なぜ恋人だと認めているんだろ。それ以上に結婚するっぽい話になっているし。

 私の心の叫びは届くことなく、二人は冷静なケンカをしている。

「そう。そこまで考えているの。でもね、いくら独立して自由だと言っても、あなた将来、CRONUSの社長になる立場の人間よ。結婚相手だってそれ相応の人じゃないと」

「本来、副社長は父さんがなるべきだった。でも父さんは好き勝手に生きている。それで、俺には社長になれ、結婚相手はちゃんとした人にしろ。冗談じゃない。仕事も結婚も、俺が自分の意志で決める。それから副社長になったのは、あなたの言いなりになったからじゃない。純粋にCRONUSと社長が好きだからだよ。勘違いして、俺を言いなりに動かせると思ったら大間違いだ」

 お父さんのことを言われると、お母さんは口をつぐんだ。前に落合さんから聞いた話で、お父さんとは複雑な関係なんだろうなとは思っていた。まさかお母さんともこんな関係だったとは。
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