副社長と恋のような恋を
「酒井ちゃん、かっこいい」となぜかテンション高めの村田先輩に褒められた。

「酒井さんは次回の会議までにいくつかの名前を考えてきてください。小説のほうは、連作短編集でいきましょう。それから十月ごろ腕時計のサンプルが上がってきます」

 その瞬間、村田先輩と山岸さんがすごく嬉しそうな顔をした。

 あれだけ白熱したバトルを繰り広げてできたデザインだもんね。噂ではデザイン部に戻っても白熱していたらしいから。本当によかった。

 会議が終り、席を立ったとき、副社長に声をかけられた。

「酒井さん、オープンハートに関する資料を渡したいので少し残ってください」

「わかりました」

 みんなが会議室を出ていったあと、副社長が私の隣に座った。

「あの資料は?」

「それはあとで渡す。大事な話があるんだ、手短に済ませるから」

「はい」

「実は母が君に会おうとしている。たぶん会社の前か駅で待ち伏せをするつもりだろう」

 そう言われて、驚きよりも納得してしまう。あの感じだと私の存在が邪魔なのだろう。厳しいことを言われそうだな、と思った。

「あの、会社帰りなら気づかないんじゃないですか? あのときは都築麻衣の恰好だったし。名前は本名を名乗りましたけど」
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