副社長と恋のような恋を
六人のほうが近い
 副社長と付き合うことになって変わったこと。デートの回数が増えた。いつも手を繋ぐようになった。仕事帰り時間が合えば一緒に夕飯を食べるようになった。都築麻衣の姿ではなく、酒井麻衣のままで出かけることも増えた。それから、キスをするようになった。

 今日は仕事帰りに夕飯を一緒に食べることになっている。

「オーガニック野菜を扱っている美味しいお店があるからそこに行こうと」と、副社長が言った。

 都築麻衣の姿でない、酒井麻衣の状態で副社長といることが落ち着かない。そして社内の人に見られたらと思うと、ますます落ち着かなくなる。

 仕事帰りに夕食に行こうと誘われたとき、私が誰かに見られたらどうするんですかと言ったら、副社長は悪いことをしているわけじゃないんだから堂々としていればいいよ、と言った。

 もし都築麻衣で会っているとき、酒井麻衣で会っているとき、両方を見られて二股疑惑が出るかもしれませんよ、と言えば、それすごくおもしろいねと言って、笑っていた。そんな呑気な副社長でも待ち合わせは会社から離れた場所でするようにしている。

 副社長が連れてくれたお店は、高原にある小さなログハウスのような外観のお店で、比較的、若い女性のお客さんが多いようだった。
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