副社長と恋のような恋を
「すぐに座れてよかったね」

「そうですね」

 私たちは四人掛けのテーブルに案内された。メニューを広げると、野菜をたくさん使った料理が多かった。

「サラダ、美味しそうだから、二種類頼もうか」

「いいですね。私、この生ハムのサラダがいいです」

「いいね。あと、シンプルにシーザーサラダにする?」

「はい」

 サラダに加えて、夏野菜のカレーとおからハンバーグ、それから貴腐ワインを頼んだ。

「明人さん、貴腐ワインってなんですか?」

「使っているブドウが干しブドウなんだ。酸味が弱く、とても甘いいワインなんだよ」

 副社長が説明を終えたタイミングで、貴腐ワインが来た。グラスに注がれたワインは一般的な白ワインよりも色が濃かった。

「さあ、どうぞ」

 琥珀のようなワインを一口飲んでみる。本当に甘くてカクテルを飲んでいるような口当たりだった。

「想像以上に甘い。私、普通の白ワインより貴腐ワインのほうが好きです」

「気に入ってもらえてよかった。ここ、ワインの販売もしているから、貴腐ワインを一本買って帰ろう」

 副社長は私が好きだと言ったものを、マンションに置いておいてくれる。マンションに行くと、冷蔵庫には私の好きな食べ物が少しずつ増えていた。
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