副社長と恋のような恋を
 副社長は照れたように笑いながら私の手を握った。そして顔をぐっと近づける。

「今、好きって言ってくれたら、すごくうれしいな、俺の花嫁さん」と、私にしか聞こえない小さな声で副社長は言った。

 顔が赤くなるのを感じながら、少し体を後ろにずらした。私の反応を見て、副社長は微笑んでいた。

「明人さんもかっこいいです。白いタキシードをそこまで着こなせる人なんていないですよ」

「ありがとう」

 手をつないだまま、副社長は私の隣に立った。そして近くのテーブルに置いてあったスマホを手に取る。

「佐藤、悪いんだけど、写真撮ってもらえないかな?」

「はい」

 スタッフの人がドレスの裾とヴェールを直してくれた。そして佐藤さんの合図とともにフラッシュがたかれた。

「どうですか?」

 スマホの画面を向けられ、ふたりで画面をのぞき込む。

「よく撮れてる。ありがとう」

 スマホを受け取った副社長は嬉しそうに画面を見つめている。

「あとでその写真、私にも送ってくださいね」

「うん、わかった」

「あっ、資料用にも撮っておかないと。顔を映らないように首から下だけを撮ればいいか。麻衣、動かないで」

 副社長はスマホを構えて、数歩後ろに下がった。ドレスのみを撮ったあと、私が副社長のタキシードのみを撮った。
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