副社長と恋のような恋を
そして、もう一度ふたりで並び、佐藤さんに首からしたのみを撮ってもらった。このとき、私と副社長にはおよそ十五センチの身長差があり、私は台に乗っていた。
それから服を着替えて、結婚式場をあとにした。できれば、平井さんに挨拶をしてから帰りたかったけれど、ブライダルフェアで忙しいらしく会うことができなかった。
「ちゃんと平井さんにお礼言っておいてくださいね。私も、いろいろありがとうございましたって言っていたことも伝えてくださいね」
「わかってるよ」と、運転する副社長は言った。
流れる景色を眺めながら、平井さんの言葉を思い出した。
「あの、平井さんが言っていたんですけど、ゼロ人よりも近い六人を見つけたってなんですか?」
「平井、そんなこと覚えていたのか」
副社長は少し複雑そうな表情をした。
「麻衣は六次の隔たりって知ってる?」
「確か、赤の他人のふたりが出会うためには、知り合いの知り合いというような関係の人間を五人辿ればいいってやつですよね」
「そう、それ。それを題材にした小説を大学生のころ読んで思ったんだ。親とは一人も介さずに出会ったのに、親との間には見えない何十人もの人がいるような気がして。逆に五人を介せば出会える人のほうがよっぽど近いのかもしれないと思ったんだ。だから仲介人ゼロの親より、仲介人五人で出会える人の中に自分をわかってくれる人がいるってね、そう思ったんだ。このことを話したことがあるんだよ、平井に」
それから服を着替えて、結婚式場をあとにした。できれば、平井さんに挨拶をしてから帰りたかったけれど、ブライダルフェアで忙しいらしく会うことができなかった。
「ちゃんと平井さんにお礼言っておいてくださいね。私も、いろいろありがとうございましたって言っていたことも伝えてくださいね」
「わかってるよ」と、運転する副社長は言った。
流れる景色を眺めながら、平井さんの言葉を思い出した。
「あの、平井さんが言っていたんですけど、ゼロ人よりも近い六人を見つけたってなんですか?」
「平井、そんなこと覚えていたのか」
副社長は少し複雑そうな表情をした。
「麻衣は六次の隔たりって知ってる?」
「確か、赤の他人のふたりが出会うためには、知り合いの知り合いというような関係の人間を五人辿ればいいってやつですよね」
「そう、それ。それを題材にした小説を大学生のころ読んで思ったんだ。親とは一人も介さずに出会ったのに、親との間には見えない何十人もの人がいるような気がして。逆に五人を介せば出会える人のほうがよっぽど近いのかもしれないと思ったんだ。だから仲介人ゼロの親より、仲介人五人で出会える人の中に自分をわかってくれる人がいるってね、そう思ったんだ。このことを話したことがあるんだよ、平井に」