副社長と恋のような恋を
七日に告白
「とうとうできたんだ」と、村田先輩はうれしそうに言った。

 テーブルの上に置かれた箱をみんなが見つめる。副社長が箱のふたを開けると、歓声があがった。

「これ、僕がほしいですよ」

 山岸さんは興奮気味に言った。それに対して、じゃあ自分で買いなさいと村田先輩が返す。

「いや、期間限定発売のものをデザイナーが買うのは忍びないです」

「確かにそれはあるわね」

 村田先輩はレディースのほうを自分の腕に当てた。

「やっぱり赤がいいスパイスになったね」

「ほんとうですね。メンズのほうも、赤によってセンスの高い感じになっていますね」

 森本さんは文字盤を眺めながら言った。

「時計のサンプルも来たので、オープンハートの名前を決めてしまいたいと思っています。この前、酒井さんが提案した、ホールド・パルス(hold pulse)とザ・ラスト・ビート(the last beat)。どちらにしますか? また改善案などもあったら言ってください」

 副社長はサンプルを興奮気味に見つめる私たちに言った。

 オープンハートのネーミングは最初、五つの名前を提案して、その中からこの二つが残った。正式に決めるのはサンプルを見てからということで、一時保留になっていた話だ。
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