副社長と恋のような恋を
 ここ最近、村田先輩と山岸さんの意見が一致することが多い。あのデザインでの白熱バトルが幻だったように思えてきてしまう。

「ほとんどの人がザ・ラスト・ビートのほうをと考えているようですね。酒井さんはどう思いますか?」

 副社長に話を振られても、私はほとんど副社長の顔を見ることができなかった。ここ最近の私はずっとおかしい。でも、今は仕事。私は落ち着いて話すように心がけた。

「みなさんの意見が一致しているザ・ラスト・ビートでいいと思います。終わりと始まりが表裏一体のように感じ、ザ・ラストと付けました。それは結婚も同じ面を持っていると思います。独身に終わりを告げ、既婚者になる。終わりと始まりは常に背中合わせのペアなんです。この辺のことをキャッチコピーで使いたいと私も思っていますし、私もザ・ラスト・ビートがいいです」

 話し終えると、なぜかみんながポカンとした表情でこっちを見ていた。そしてなぜか拍手が始まった。

「あの、これはなんですか?」

「さすがコピーライター。数々の名言がでてきたね。終わりと始まりは常に背中合わせのペアって、映画のキャッチコピーだよ。それそのまま使えば?」
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