副社長と恋のような恋を
 村山先輩は感心したように言った。村山先輩が話している間に、拍手は終わっていた。

 そして自分がまた若干恥ずかしい感じの語りをしたことに気づいた。

「すみません、一人語りみたいなことになっちゃって。でも、いいキャッチコピーが浮かびそうです」

 私は苦笑いを浮かべながら、その場を適当に治めた。

 時計のほうは若干のデザイン修正があるものの、おおかたは問題なかった。

 会議が終わり、会議室から出ると、村田先輩に声をかけられた。

「酒井ちゃん、お昼一緒に食べようよ」

「はい」

 てっきり、社食に行くものだと思っていた。なぜならいつも通り、お財布のみを持ったスタイルだったから。でも、社食を通り過ぎ、会社の外に出てしまった。

「今日は外で食べるんですか?」

「そう。会社にこもってると、昼も夜も社食になるじゃない。さすがに飽きるんだよね」

「ですね。社食ってメニューもそう多くないですしね」

「私のおすすめの所に連れていってあげるから、ただ、ちょっと距離あるから早歩きでね」と言って、村田先輩は足早に歩いていく。

「ここ」

 そう言って村田先輩が指さしたのは、どう見てもバーだった。村田先輩はためらいもなくドアを開けた。

「いらっしゃいませ」
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