副社長と恋のような恋を
 カウンター内からTシャツにエプロンというシンプルな姿の、髭を蓄えた四十代くらいの人が言った。

 店内は混んでいて、カウンターにちょうど二席空いていたため、そこに並んで座る。

「ここのサンドイッチすごく美味しいんだよ。おすすめはアボカドとカクテルシュリンプのサンドイッチ」

「美味しそうですね。それでお願いします」

「うん。店長、アボカドとカクテルシュリンプのサンドイッチひとつ。それと、玉子とベーコンのサンドイッチひとつ」

 お髭の店員さんは店長だったらしく、村田先輩の注文にかしこまりましたと答えた。

「サンドイッチ、せっかくだからシェアしよう」

「そうですね」

 店長はおしぼりとお冷や置き、カウンター内での調理を続けた。

「先輩、こんないいお店よく知ってましたね」

「うん。レンタルスペースが増えてきてるって聞いて、どんなのがあるのかなと思って調べてたら、たまたま見つけたの」

「レンタルスペースってなんですか?」

「夜のみ運営しているお店が、昼間だけお店を貸すことだよ。もちろん、その逆もあるけどね。酒井ちゃん、ここに入るとき不思議そうな顔していたもんね。ここ夜はバーなんだよ。バーもなかなかいいから、今度一緒に来ようね」
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