副社長と恋のような恋を
 そう話しながら、副社長は私の唇や頬を撫でていた。指先は熱くて、話を聞いているだけなのにドキドキした。

「たぶん、ここから先は止めることはできないよ。もし、今日は無理って思っているなら、今がチャンスだよ。どうする?」

「止めなくていい……」

「わかった」

 副社長は体を起こすと、着ていたTシャツを脱ぎ捨てた。それからまた私に覆いかぶさった。

「麻衣、さっき言いてくれたこともう一度言って」

「えっ?」

 両手で頬を覆われ、鼻と鼻がぶつかりそうな距離。私は副社長の目を見つめる。

「俺のこと好き?」

「好き」

「俺も」と言って、副社長は微笑んだ。

 私は副社長の背中に腕を回した。それからは副社長の体温だけをひたすら感じた夜だった。
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