副社長と恋のような恋を
「うん。今の麻衣のままでいいよ」と言って、副社長は私の頭を撫でてくる。
「ねえ、お兄さんってどんな人」
「一言で言えば、穏やかな人だよ。年が七つ離れているからかもしれないけど、ケンカしたことや怒られた記憶ってないんだ。だから、兄さんが怒ったのって一回しか見たことがない」
ソファに座り直し、副社長はすこし目線を上げて、飾ってある絵を見つめた。
「母さんに、画家になることを反対されたとき、声を荒げたんだよ。僕の夢に口出しするなって。あれは俺も母さんもびっくりした。兄さんが大きな声を出すことなんてなかったから」
お兄さんが怒った原因はなんとなくお母さんかなと思ったら、予想通りだった。
「それから兄さんは母さんとはほとんど口を利かなくなって、母さんにだけ海外に行くことを言わずに行っちゃった」
「そうなんだ。お父さんは画家になることを反対しなかったの?」
「父さんはなにも。子供を理解してるように見えるけど、本当はたいして興味がない、放任主義なんだよ」
それはそれで寂しいなと思った。それを聞いていると、お母さんが子供に口を出してしまうのもわからなくもないと思った。家族の誰もが自分を必要としてくれない。だから、自分から関わっていくしかなかったんだろう。ただ、その関わり方を間違えた結果が現在の状況なんだろうけど。
「ねえ、お兄さんってどんな人」
「一言で言えば、穏やかな人だよ。年が七つ離れているからかもしれないけど、ケンカしたことや怒られた記憶ってないんだ。だから、兄さんが怒ったのって一回しか見たことがない」
ソファに座り直し、副社長はすこし目線を上げて、飾ってある絵を見つめた。
「母さんに、画家になることを反対されたとき、声を荒げたんだよ。僕の夢に口出しするなって。あれは俺も母さんもびっくりした。兄さんが大きな声を出すことなんてなかったから」
お兄さんが怒った原因はなんとなくお母さんかなと思ったら、予想通りだった。
「それから兄さんは母さんとはほとんど口を利かなくなって、母さんにだけ海外に行くことを言わずに行っちゃった」
「そうなんだ。お父さんは画家になることを反対しなかったの?」
「父さんはなにも。子供を理解してるように見えるけど、本当はたいして興味がない、放任主義なんだよ」
それはそれで寂しいなと思った。それを聞いていると、お母さんが子供に口を出してしまうのもわからなくもないと思った。家族の誰もが自分を必要としてくれない。だから、自分から関わっていくしかなかったんだろう。ただ、その関わり方を間違えた結果が現在の状況なんだろうけど。