副社長と恋のような恋を
「一応、言っとくけど下心はないから。送ってくれた本に“思い出の場所、九時に”ってメモ付けたでしょ。いろいろな場所が浮かんだけど、俺たちの思い出の場所っていったらこのホテルしかなくて。そうするとバーかこのホテルの最上階で中庭のイルミネーションを見るしかないだろ。最上階に行くには、ホテルを取らないといけないから」

 エレベータは最上階についた。エレベータから降りると、副社長は長い廊下を歩いていく。

 連れてこられたのは、初めて出会った夜、中庭を見下ろした場所だった。

「今日は、最初にここに来たんだ。そしたら中庭に麻衣がいるのを見つけた。中庭にいたのはなんで?」

「だって、すごく悲しかったから、ちょっと困ればいいと思ったの」と言えば、副社長は私の目を見つめた。

「うん、麻衣はこれから俺をたくさん疑っていいから。疑うたびに俺に聞いて。俺はちゃんと話すから。そして、君に好きだと伝えるから」

 そう言って、副社長は私を抱きしめた。

「麻衣、好きだよ」

「本当に?」

「うん、好きだ」

「うそ」

「嘘じゃないよ。本当に好きだよ」

 私は副社長の胸に顔を埋めながら、何度も聞いた。そのたびに副社長は好きだっと言ってくれた。もう何度繰り返したかわからないくらい好きと言われた。
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