副社長と恋のような恋を
「まさか、そんな返しが来るとは思わなかったよ。ますます企画チームに入れたくなった。俺が君のことを誰にも言わないと約束しよう。そして都築先生の恋愛小説へのネタを提供しよう。どうだい、悪い条件ではないと思うけど」

 いい所を突いてきた。副社長の過去の恋愛話が聞ける。それはさぞいいネタになる。

 頭には角田さんの言葉も過った。

“男友達を作るっていうのもいいですよ。リアルな男性像は男性に関わることですから” 

 男友達もいないし、時々話すことのできるイケメン副社長。いいかもしれない。

「わかりました。企画チームに入ります。約束は守ってくださいね。とりあえず、ライターとして企画チームに入りますので、酒井麻衣が考えるコピーライトでいいですか?」

「もちろん。交渉成立。じゃあ、今度、どこにデート行く?」

「デート?」

「うん、デート」

 今の話の流れから、なぜデートなんて言葉が出てくるんだろう。戸惑っていると、副社長が笑顔で口を開いた。

「ネタを提供するって約束しただろ。だからデート」

「ネタを提供って、実践なんですか?」

「もしかして俺の恋愛話でも聞けると思った? 男が過去の恋愛を語るなんてしないよ。それに身をもって体験したほうが、文章にリアリティがでるんじゃない」
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