副社長と恋のような恋を
「副業でライターをなさっているようですが、今までどのようなものを書いてきましたか?」

 うわ、これ意地悪な質問だ。わざとだ。心の中で楽しんでいるんだ、きっと。

 副社長はあの会議と同じような笑みを浮かべている。これは仕事用の微笑み方だ。相手に威圧感を与えない笑み。プライベートでの表情を知っているからこそ、こんなことに気がついてしまう。

「主にコラムです。美味しいケーキについていやおすすめの小説などが多いです」

 過去に何度かコラムも書いてことがある。嘘は言っていない。書籍化はされていないため、簡単に読むことはできないけれど。

「わかりました。では、今回、企画チームへの参加候補者として酒井さんを選んだ理由を説明いたします。酒井さんの文章力を借りたいといういのが率直な気持ちです。今まではホームページやパンフレットなどに掲載されているキャッチコピーはすべて外部のライターに頼んでいました。今年はark五周年という節目の年になります。そのためコピーライトも今まで以上に力を入れたいと考えています」

 昨日、食事の席で言ったことを経営者の顔で副社長は言った。

「新作arkをより一層引き立てるようなコピーライトを考えられるように尽力したいと思います」
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