副社長と恋のような恋を
「今、連載している青春小説のほうは、このままプロット通りに進めてください。評判もいいので、もしかすると連載期間が少し伸びるかもしれません」

「わかりました」

「突然ですけど、お付き合いしている人っていますか?」

 なんの脈絡もない問いかけに、思わずむせてしまった。呼吸を整えてから、いませんと答えた。

「あの、急にどうしたんですか?」

「おもしろい恋愛小説を書く方法は恋愛することだと思うんです。これは私の勝手な予想なんですけど、都築先生って奥手じゃないかなって」

「奥手というよりは恋愛が面倒なんです」

 私の渋い表情とぶっきらぼうな返しに、角田さんは納得したような顔で見つめてきた。

「恋愛しろと言ってできるものでもないので、あまり乗り気じゃないなら仕方ないですね。でも、男友達を作るっていうのもいいですよ。リアルな男性像は男性に関わることですから」

「善処してみます。まあ、恋愛から遠のいているのは、会社勤めと執筆活動で、恋人に充てる時間がないからです。それに空いている時間は執筆に充てたいです」

「そうですよね。無理はしないようにしてください。今は連載しているほうをメインにしてくださいね」

「はい」
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