副社長と恋のような恋を
 膝の上からはチキンやポテトのいい香りがする。どこに行くのかよくわからないけど、少しわくわくした。

「あ、見えてきた」

 列をなしている車の後ろについた。ゲートで係の人にチケットのようなものを渡されているのが見えた。遊園地にでも来たのかな、と思った。

 車が前に進み、副社長が運転席の窓を開けた。係りの人にチケット代を払い、パーフレット二冊くださいと副社長は言った。透明のビニール袋に入った冊子を受け取り、こっちに渡してきた。

「ちょっと持ってて」

「はい」

 それを受け取り、ビニール袋越しに見えたのは映画のパンフレットだった。去年、上映されていたラブコメディーの映画だ。確か全米でナンバーワンのラブコメというようなキャッチコピーがついていたような気がする。

 誘導員に従って、車は大きな広場へ出る。そこは大きなスクリーンがあり、車が何台もその前に停まっていた。

「あのここって」

「ドライブシアター。知ってる?」

「そういうのがあったのは知っていますけど。来るのは初めてです」

「十年位前に日本にあったドライブシアターは全部閉鎖されちゃったんだよね。ネットでさ、期間限定でドライブシアターが復活するって知って来てみたくなったんだ」
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