副社長と恋のような恋を
「恋人だから。もっと言えば婚約者だからね」
そんな設定があったことをすっかり忘れていた。そうだ、表向きは婚約者だったんだ。婚約者ごっこだよ。
私は、差し出された手に自分の手を重ねた。
遊園地内に入ると、そこはおとぎ話の世界のようだった。
「夜の遊園地、初めて来ました。ライティングされているからかな、別世界に来たみたい」
「そうだね。子供のころ、夜の学校や夜のプールに行ってみたくなかった?」
「行ってみたかった。ただ暗いだけなのに、なにか違うんじゃないかって思いましたよね」
ジェットコースターの横を通り過ぎると、キャーと言う叫び声が聞こえる。メリーゴーランドには、少し恥ずかしそうな顔で白馬に跨る彼氏と、それを見て微笑んで隣のペガサスに乗る彼女。みんな、それぞれ夜の遊園地を満喫していた。
観覧車に着くと、並ぶこともなくスムーズにゴンドラの中へと誘導された。ゴンドラがゆっくりと上っていく。
「さっき下から見ていた夜景を、今度は上から見るなんて贅沢ですね」
「うん。今日はここ一帯の夜景を余すことなく堪能することができるね」
「はい」
観覧車はだいぶ上に来ていて、ゴンドラの四つ先に頂上がある。
「ねえ」
副社長の声に、外に向けていた視線を戻した。
そんな設定があったことをすっかり忘れていた。そうだ、表向きは婚約者だったんだ。婚約者ごっこだよ。
私は、差し出された手に自分の手を重ねた。
遊園地内に入ると、そこはおとぎ話の世界のようだった。
「夜の遊園地、初めて来ました。ライティングされているからかな、別世界に来たみたい」
「そうだね。子供のころ、夜の学校や夜のプールに行ってみたくなかった?」
「行ってみたかった。ただ暗いだけなのに、なにか違うんじゃないかって思いましたよね」
ジェットコースターの横を通り過ぎると、キャーと言う叫び声が聞こえる。メリーゴーランドには、少し恥ずかしそうな顔で白馬に跨る彼氏と、それを見て微笑んで隣のペガサスに乗る彼女。みんな、それぞれ夜の遊園地を満喫していた。
観覧車に着くと、並ぶこともなくスムーズにゴンドラの中へと誘導された。ゴンドラがゆっくりと上っていく。
「さっき下から見ていた夜景を、今度は上から見るなんて贅沢ですね」
「うん。今日はここ一帯の夜景を余すことなく堪能することができるね」
「はい」
観覧車はだいぶ上に来ていて、ゴンドラの四つ先に頂上がある。
「ねえ」
副社長の声に、外に向けていた視線を戻した。