副社長と恋のような恋を
『食べるものをなにか作ってほしい』

 その状況だと自分で食事を用意するは面倒だろう。だからといって食事を摂らなければ、薬が飲めない。

「いいですよ。調理器具はちゃんとありますか?」

『ひと通り揃ってる』

「わかりました。私が行くまで大人しく横になっていてくださいね」

 副社長はかすれた声でわかったと言って、電話を切った。そして数分後に自宅の住所が送られてきた。

 急いで家に戻り、服を着替え、エプロンとノートパソコンをバッグに入れた。

 出版社に着き、編集部へと急いだ。受付で角田さんを呼んでもらい、会議室に通される。

「お待たせしました」

 角田さんが笑顔で入ってきた。

「都築先生、例のarkとのコラボ小説、ぜひうちで書籍化したいと思います」

「話、通ったんですね」

「はい。都築先生、初の恋愛小説が有名ブランドとのコラボ。これは宣伝力、話題性が完璧です」

 角田さんは興奮気味に言った。なんだか大変なことになったんじゃないかと、少し不安になる。

「これからのことなんですが、出版社側としましては私が担当編集について、小説を二人で作っていきたいと思います。会議で決まった内容は都築先生から聞いて、それを踏まえたうえで小説を書いていくという形を考えています」
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