副社長と恋のような恋を
 キッチンもリビングと同じようにきれいにしてあった。調理器具を出すため、キャビネットを開くと、高そうなフライパンや鍋が並んでいた。キャビネットのポケットに収納されている包丁はプロが使うような包丁だった。

 食器棚に置かれているオーブンレンジは最新型で、この前ネットを見ているとき欲しいなと思ったが、値段を見て固まった代物だ。炊飯器も多機能タイプで、蒸しケーキやおかずなどが作れる優れもの。冷蔵庫を開ければ、食材がちゃんと入っている。

 副社長、料理好きなんだな。

 ペットボトルのミネラルウォーターを常温に戻すため、冷蔵から出しておく。

 それからおかゆを作りはじめた。あれだけ咳をしているのであれば、なにかを飲み込むのも苦しいだろう。なるべく柔らかめのおかゆにした。食器棚にはひとり用の土鍋があり、それにおかゆを入れた。トレーにおかゆ、レンゲ、梅干しを入れた小鉢を載せる。

 副社長の様子を見に、寝室のドアを開けた。咳のせいで眠れないらしく、ただ辛そうに横になっているだけだった。

「明人さん、おかゆできたんですけど食べられますか?」

「ああ、少し食べる」

「ちょっと待っててくださいね」
< 94 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop