副社長と恋のような恋を
 副社長は食事をとったおかげで、少し落ち着いたらしい。

「あの、パジャマ着替えます?」

「そうしようかな」

「着替えは自分で出せますか?」

「ああ」

 足元がふらついては危ないと思い、ベッドから降りるのを見守った。副社長はふらつくこともなく立ち上がり、数歩先にあるチェストへ向かった。

「手とか顔とか拭くとさっぱりしますよ。蒸しタオル作りましょうか?」

「頼む。タオルは洗面所のラックにあるやつ、どれでも使って」

「わかりました」

 洗面所から数枚のタオルを取り、レンジで蒸しタオルにした。ドアをノックすると着替え終わった副社長は、ベッドに座っていた。

「どうぞ」

 トレーに置いた蒸しタオルを渡し、洗濯物を回収した。

「着替えはランドリーボックスに入れておいてくれればいいから」

「わかりました。あの、食事をとったあとであれなんですけど、夕飯も私が作りましょうか?」

「いいの? それまでうちにいることになるけど」

 使い終わったおしぼりをトレーに戻した副社長は、少し嬉しそうな顔で私を見た。

「はい。特に予定もありませんから」

「じゃあ、お言葉に甘えて」

「私、リビングにいますから、なにかあったら声をかけてください」
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