さあ、好きと伝えに行こう
第1章
最近、やたらと私に構って来る奴がいる。
いつも何かと絡んで来る。
私は彼の事があまり気にくわない。
正直苦手。
彼は私の妹の友達。
妹が家に友達を連れて来た時に、何度か見た事があった。
名前は何て言うんだっけ?

「アリアー!今日も麗王君来たよー?」
友達が今日の扉の前でそう叫ぶ。
「こんにちは〜!アリアちゃん一緒に帰ろー」
彼は扉の外からひょこっと顔を覗かせる。

ああ、そうだった。
麗王だ。
有栖川麗王。
水色と琥珀色の髪の毛が印象的だ。
一体、どちらが地毛なのだろうか。
いや、あれは本当に地毛なのだろうか。

そんな事を考えながら教室を出て行く。
勿論、彼の事は無視する。
「えー?今日も無視ー?少し僕の事可哀想だと思わない?」
彼は私の無視をあまり気にせず、にこにこと微笑みながら、私の後を付いて来る。
何が『可哀想だと思わなーい?(ウザイ声)』だよ。
可哀想なのは私だよ。
一週間前からいきなり彼が下校時に現れる様になった。
何も共通点が無い奴からいきなり付きまとわれている。
全く良い迷惑だ。

「で、いつまで付いて来る訳?」
私は足を止め、彼に言った。
「え〜?付いて来るって言い方やめてよ。それじゃあまるで、僕がストーカー見たいじゃん」
彼は笑った。
凄く愉快そうに。
「家まで送るよ」
「は?やめて。1人で帰れるし。私は今忙しいの」
私は鞄から本を取り出す。
「だから、近付かないで」
本を開け、止めた足を再び家に向かって動かす。

最近学校の勉強が忙しくて、あまり法律の仕事が出来ていない。
学校の勉強に付いて行くのが精一杯だ。

私の通っている学校は、私立桜花学園。
五校の桜学園の中で一番勉強が重視される学園。
勉強が全ての学園。
勉強さえ出来れば良い学園。
私は高等部第一学年Aクラスで、特待生だ。
学費は全て免除されている。
このまま成績をキープすれば、将来は決まったも同然だ。

私は将来弁護士になる。
その為には勉強しなければいけない。
私には青春を楽しんでいる暇など、無いのだ。

「え、六法全書?アリアちゃん将来は法律系のお仕事?」
彼は私の読んでいた本を、覗き込む様にしていた。
「あー!もう!アンタ何なの?」
私はバンッと音を立てて本を閉じた。
「え?僕?」
彼はきょとんとした顔をした。
私はそれを睨む。

「僕は有栖川麗王。私立桜蘭学園中等部第三学年。S・Aクラスだよ。2月14日生まれのAB型。身長は林檎16個分ぐらいで、体重は林檎の入ったダンボール5箱分くらいかな?好きな物は、スイーツとか洋菓子と、・・・自分かな」

いや、そう言う事を聞いたんじゃない。
しかも、そんなに詳しく教えてくれなくったって良い。
身長と体重林檎って、キティーちゃんかよ。
好きな物が自分って、何処ぞのナルシストだ。

そこから家に着くまで彼はずっと私に話し掛けていたが、それは全て無視してやった。

「もう家着いたんだけど」
玄関前の階段を登り、振り返ってそう聞く。
「んー、そうだね。じゃあ僕」
その時扉が開いた。
中から出て来たのは妹だった。

「アリアちゃん、と、麗王。2人でどうしたの?」
「アリアちゃんと一緒に帰って来たから、ここまで送らせてもらったの」
「あ・・・。そうなんだ」
その時、妹は少し複雑そうな顔をした。
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