背徳の王太子と密やかな蜜月
彼は今、一糸まとわぬ姿――。イザベルは目のやり場に困って、彼の瞳を睨むように見つめるしかない。
しかしアロンソからすれば、その眼差しはむしろ逆効果だった。芽生えた出来心が、みるみるうちに成長する。
「お前は昨日……自分のことを“大人だ”と言っていたな」
「そ、それがどうしたのよ……」
「その言葉が本当か、確かめてやろうと思って」
「え? ――んぅ、っ!」
イザベルは一瞬、自分の身に何が起きたのかわからなかった。ただ、ひんやりと冷たく、それでいて柔らかい感触が、自分の唇にかぶせられて……目の前には、アロンソの長い睫毛が伏せられている。
(こ、これって、キス――!?)
そう理解するやいなや、イザベルの胸がドキン、と大きく脈打ち、恥ずかしさから腕を突っ張ってアロンソから離れようと試みる。しかし逞しい体は、女の力ではびくともしない。
それどころか、一旦唇を離した彼は息のかかる距離で改めてイザベルを見つめ、顎をクイ、とつかんで言った。
「舌を出せ」
「……なんで」
「“大人”ならわかるだろ?」