背徳の王太子と密やかな蜜月
「これね、美味しいキノコをもらっ……じゃなくて、取ってきたの」
本当のことを話せば、シルバラーナの騎士と会ったことや彼との会話、そして自分の素性まで語らなければならなくなる。
そうするとこの生活も上手くいかなくなる気がして、彼女は咄嗟に嘘をついたのだが。
「外に出たのか?」
腰に両手を当て、急に眉根を寄せ険しい顔になったアロンソを見て、イザベルも気が付いた。そういえば最近のアロンソは、自分が外出すること自体、難色を示すのだった、と。
「す、少しよ、小屋の周りだけ!」
「それでも、ひとりの時はよせ。何があるかわからないだろ」
「大丈夫よ、私だって戦える。はじめはアロンソだって、私のこと戦力にするつもりだったじゃない」
あまりに過保護なアロンソに腹が立ち、彼の方へくるりと体の向きを変えて頬を膨らませるイザベル。
睨みつけた先の彼は気まずそうに首の後ろを撫で、それからわざとイザベルから視線を外してぼそりと呟いた。
「そりゃ、はじめはお前のこと特別に思ってなかったから……」
「特別……?」
きょとんと目を丸くするイザベルの鈍感さに、アロンソの口から思わずため息がこぼれた。