背徳の王太子と密やかな蜜月
「ごめんなさい、失敗しちゃった?」
「いや、違う。……とにかく、二秒で俺の視界から消えてくれ」
いきなり突拍子もないことを言い出すアロンソに、イザベルの頭の中は疑問符でいっぱいになる。
(二秒で消えてって……そんなに絶望的な味だったってこと?)
よく見るとアロンソは肩で息をしていて、苦し気に服の胸元をつかんでいる。まるで熱でもあるかのように潤みを持った瞳がイザベルを切なげに見つめて、彼女の胸がドキンと鳴った。
「アロンソ? 具合が悪いの?」
どこか普通じゃない様子の彼に触れようと、イザベルが手を伸ばしたその時。
「消えろって……言っただろ」
彼のなかの何かが決壊してしまったような、切羽詰まった声が吐き捨てられる。
「えっ……ちょっと、アロンソ!」
突然彼女を肩に担ぎあげたアロンソは、部屋の隅に置かれたベッドまで歩いていくと、そこへ彼女を放り投げる。
仰向けに倒れたイザベルが上半身を起こそうとすると、すかさずアロンソが四つん這いに覆いかぶさった。
美しいヘーゼルの瞳が、初めて見る凶暴な光に満ちている。