背徳の王太子と密やかな蜜月
イザベルが言い終えるより前に、アロンソが鋭く聞き返した。その勢いに驚いて、イザベルはひゅっと息を呑む。
「どうしたのよ、アロンソ」
彼女の不安げな瞳に顔をのぞき込まれ、アロンソはハッとした。彼女には悟られたくない。シルバラーナ王国と自分の忌まわしき過去を。
「ああ……驚かせてすまない。しかし、その男の目的は一体……」
シルバラーナ王国の、身分の高そうな騎士。それが、先ほど小屋を訪ねてきた男の口から出た“王太子”なのだとしたら……
その正体を、アロンソは知っていた
「実はね、あのキノコをくれたのも、その騎士で」
「ということは、やはり……あれは“闇夜の傘”か」
「……! どうして、あなたがそれを知っているの?」
さっきから、アロンソはイザベルが会った騎士の正体やシルバラーナ王国について、なにか思い当たることがあるようだ。
それなら知っていることを話してほしいと思うイザベルだったが、アロンソは沈んだ様子でため息をつき、彼女に懇願する。