背徳の王太子と密やかな蜜月
「お前、何を言っているんだ。そんなことできるはずないだろ」
「責任……取ってくれるんじゃなかったの?」
凛とした声で詰め寄られ、もう言い逃れができなかった。あの小屋で自分が彼女にしでかした行為を思えば、当然のことだ。
アロンソはごくりと唾を飲み込み、おそるおそる彼女の意思を確認する。
「イザベル……本気なのか?」
「もちろんよ。だから、逃げるのなら、教会のある町か村にしましょう? そこでささやかな結婚式を挙げるの。いいでしょう?」
にっこり微笑まれて無邪気な提案をされると、アロンソの心も少し軽くなった。
(……彼女と一緒に、新たな人生を歩むのも悪くないかもしれない。それがたとえ、永遠には続かない幸せだったとしても)
アロンソはゆっくり目を閉じてから、心を決めた。手のひらでイザベルの頬に触れ、確かめるように言葉を紡ぐ。
「わかった。……結婚しよう、イザベル」
「アロンソ……ありがとう」
イザベルは感激して、彼にギュッと抱きついた。
どちらからともなくキスを交わし、視線を絡ませ、しばらく互いの熱に酔いしれてから、二人は旅立ちの準備を始めるのだった。