春はまだ青いか
 珍しい苗字だな。

 初めて会った時、そう思った。大学院を出てコンサルティングファームに入所した時、すでに奈央はそこにいて、同じ部署の外国人上司の秘書のアシスタント――要するに雑用係――だった。

 だが仕事はでき、社内システムやコピー取り、伝票の処理などを手際よく教えてくれた。一緒に遅くまで残業していればお菓子をくれたりして、親切で優しかった。自然と好意を抱くようになったが、当時の奈央は、自分に全く関心がなさそうだった。

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