春はまだ青いか
「お母さんって、初めて会った頃から綺麗だった?」
香奈がプリンの皿に手を伸ばしたので、取ってやる。
「いや、それが――」
言いかけて止める。今でこそ奈央は容姿を褒められるが、出会った当時は、あまり身なりを気にしていなかった。きちんとすればそれなりに見えるだろうに、なぜ外見に気を遣わないんだろう? と不思議に思ったものだ。そこが引っかかって、告白には至らなかった。あの頃の自分は青かった。
知り合って一年ほどたった頃、奈央の雰囲気が変わり始めた。原因は男。同じビルに入っている法律事務所の弁護士と付き合い始め、奈央はどんどん洗練されていった。後から聞いた話だが、彼は小学校の同級生で、偶然再会したのだという。
勝手な言い草だが、戦わずして負けた――そんな気持ちになった。
香奈がプリンの皿に手を伸ばしたので、取ってやる。
「いや、それが――」
言いかけて止める。今でこそ奈央は容姿を褒められるが、出会った当時は、あまり身なりを気にしていなかった。きちんとすればそれなりに見えるだろうに、なぜ外見に気を遣わないんだろう? と不思議に思ったものだ。そこが引っかかって、告白には至らなかった。あの頃の自分は青かった。
知り合って一年ほどたった頃、奈央の雰囲気が変わり始めた。原因は男。同じビルに入っている法律事務所の弁護士と付き合い始め、奈央はどんどん洗練されていった。後から聞いた話だが、彼は小学校の同級生で、偶然再会したのだという。
勝手な言い草だが、戦わずして負けた――そんな気持ちになった。