春はまだ青いか
「香奈はぐっすりだね」

 ホテルに戻りシャワーから出ると、娘はベッドで寝息を立てていた。長距離の移動で疲れたのだろう。

「うん。せっかくだから、ちょっと最上階のバーで飲んでくるね」

 ベッドで読書していた奈央が文庫本を置き、ルームキーを手にして立った。俺も一緒に行こうかな――そう声をかける間もなく、ドアがパタンと閉まった。

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