隣の席の魔法使い。





「あー悔しい。穂乃果の方が早く青葉くんに出会えていたら穂乃果が青葉くんに愛されていたのかな?」



飯塚が俺の腕から手を離し、その手で自分の頬の涙を拭う。



「いや……」


「おい!あっちに魔法使いがいるって!」



飯塚の言葉を否定して改めて自分の気持ちを口に出そうとした俺の言葉は通りすがりの学生に遮られる。



魔法使い?



そしてチラリと聞こえた〝魔法使い〟というワードに俺は飯塚から人混みへ意識が動いていた。




「事故に巻き込まれた男の子を助けているって!」


「さすが魔法使い!」


「何でもできるよね!早く本物が見たい!」



人混みの中へと耳を集中させればほとんどの人が同じようなことを話している。




事故に巻き込まれた男の子を助けている?


もし、助けている魔法使いが西島だったら?

きっと怪我を自分に今頃移しているはずだ。


魔法使いは何でもできる訳じゃない。

きちんと制約がある、万能な能力ではないのだ。












< 101 / 193 >

この作品をシェア

pagetop