隣の席の魔法使い。
人混みが見える。
多分あそこだ。
「西島!止めろ!」
西島の姿は見えないが、そこに西島がいる気がしてならない。
今すぐ止めるようにと必死に叫びながら西島の元へ向かう。
すると……
「……っ、あ、青葉くん」
そこには予想通り男の子を治している西島の姿があった。
「おっ、前!」
今すぐ止めさせようとした。
したのだが。
「……お、お母さん……」
「優!」
無傷で起き上がった男の子を母親らしき人が嬉しそうに抱きしめる。
そう、俺が止める前に西島の魔法は完了していたのだ。
「ありがとうございますっ、ありがとうございますっ」
「いえいえ、大丈夫ですよ。では」
母親にお礼を言われながらも西島はすぐにこの場を離れようとする。
転移の症状がおそらく始まるからだろう。