隣の席の魔法使い。
「……魔法使おうとしただろ」
青葉くんの地を這うような低い声が私の耳に届く。
「……っ」
その声を聞いて私は僅かに肩を揺らした。
今までたくさん青葉くんを怒らせてきたけれどこの怒り方は違う。
声もだが、纏う雰囲気も全然違う。
本気で怒っている。
「つ、使おうとしていないよ?」
一度は恐怖で固まってしまったが、何とか青葉くんの言葉を否定する。
青葉くんはきっと……いや、絶対魔法を使われることを望んでいない。
だからこんなに怒っているんだ。
……でも私は青葉くんに魔法を使うことを望んでいる。
ここは一旦嘘をついて、青葉くんを油断させよう。
こちらを警戒していない青葉くんにならタイミングを見ればいつだって魔法は使えるはず。
「……」
私はそれ以上の言葉はあえて並べずにじっと青葉くんを見つめた。