隣の席の魔法使い。
「……西島の魔法は右手で触れていることが発動条件だろ?」
「……っ」
私の様子を伺うように青葉くんが口にした言葉に驚きで固まる。
青葉くんが言っていることは当たっている。
1度だって青葉くんに発動条件をきちんと教えたことなんてなかったのに。
さすが青葉くん。
鋭い。
そして今の言葉は私に対する牽制だ。
私が魔法を使おうとしていたことはわかっているぞ、と。
私がバレないように魔法を使おうとしてもすぐに気づくぞ、と。
「西島の犠牲の上で生き延びたくない。いつも言ってるだろ?自分を大切にしろって」
苦しそうに青葉くんが微笑んで私の頬に優しく触れる。
その指はまだ熱を持っている。
実感が湧かない。
いつか……いや、もうすぐこの指から熱が冷めてしまうだなんて。
「……うん、ごめん」
どんな表情をしたらいいのかわからない。
だけど今にも泣き出してしまいそうなのは確実で。
魔法しか取り柄のない私なのに青葉くんに何もしてあげられないなんて。