隣の席の魔法使い。
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青葉くんのお見舞い後、穂乃果ちゃん、岡崎くんと3人で帰っていたが、穂乃果ちゃんは別方向なので途中で別れ、今は岡崎くんと2人で帰路についている。
もう夕方だというのに季節はすっかり夏で相変わらず暑いし、何より日が長くまだ夕方の訪れを感じさせない明るさがあった。
「……多分さこの夏祭りが俊哉にとって俺たちとできる最後の外出になると思うんだよね。てかそう俊哉の親に言われた」
「え?」
いつも通りの世間話から一転、岡崎くんが突然真剣な表情で言葉にした言葉に私は思わず声を漏らす。
認めたくない事実。
だけど認めなければならない事実。
嫌だ。
もっともっと青葉くんといろいろな所に行きたい。
一緒にいたい。
「奇跡なんだって。今生きてることが。数時間だけど外出できることが。だからさ、その奇跡の時間を俊哉にとって有意義な時間にしたいんだ」
にっこりと岡崎くんが笑う。
いつもと違う笑い方。
辛そう。
頭では理解してる。
今この瞬間が奇跡であることを。
でも心が着いてきていない。
私と同じ。
「俊哉の幸せには優香ちゃんが必要なんだ。だから当日は俊哉をよろしくね?」
「……うん、もちろんだよ」
私は辛そうに笑う岡崎くんの瞳をしっかりと見て笑顔で返事をした。
私は最後まで青葉くんの側にいる。
笑顔でずっと。
それが青葉くんの幸せなら尚更だし、何より私も幸せなのだからそれは最高のことだと思う。