隣の席の魔法使い。





*****



鏡に映る自分を見て思う。



「ほ、穂乃果ちゃんすごい……」



鏡に映る私はこちらをポカーンした顔で見ているのだが、白に水色の花びらの浴衣を着ており、それに似合うまとめ髪と化粧をされていていつもと雰囲気が全く違う。

自分で言うのも何だが別人だ。

普通に可愛らしい。



「当然よ!穂乃果にできないことはない!」



そんな私を見て満足げに笑っている穂乃果ちゃんこそがこの私をプロデュースしてくれた張本人。

本当にすごい腕だと思う。



鏡をじっと見つめて感心している私に「じゃあ、穂乃果も準備するからちょっと待ってて」と穂乃果ちゃんは一声をかけると、今度は自分の着付けを始めた。

穂乃果ちゃんの浴衣は白い生地いっぱいに淡いピンクと濃いピンクの花が咲き乱れている浴衣で、穂乃果ちゃんらしくすごく女の子っぽい浴衣だ。



今日は青葉くんたちと一緒に祭りに行く日。

そして青葉くんときっと最後になる外出の日。



いっぱいいっぱい思い出を作ろう。

一生分の夏祭りの思い出を作ろう。



私はこれから始まる人生で1番楽しい数時間のことを思って頬を緩めた。






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