隣の席の魔法使い。
「え?え?何?何?何?」
普段大きな声で笑わない俺を見て西島が困ったように俺を見る。
これ以上西島を困らせるのは可愛いが可哀想でもある。
「ごめん、西島。今日は……いや、いつも本当にありがとな」
話題を変えようと西島に伝えたかった今までの想いを言葉に出す。
すると……
「……へへ、こちらこそいつもありがとう」
今度は困っていた表情から少しくすぐったそうな、ふにゃりとした笑顔に変わっていた。
やっぱり西島は笑顔が1番よく似合う。
「もう長くは生きられないこと。その事実を知っても変わらず側に居てくれたこと。そんで俺の恋人になってくれたこと。俺、西島に出会えて世界で1番幸せ者だ」
本当に短い人生でもその人生は誰よりも幸福に満ち溢れていた。
長く細くではなく、俺の人生は短く太くだった。
「俺さ、もうこの先長くないって知った時、じゃあ、最期は自由でいたいって願ったんだよ。だからギリギリまで入院なんてしなかったし、髪だって金髪にしてみたりして。元々心残りがないように生きてきたつもりなんだ」
心残りは1つだって作らない。
短い時間だからこそ精一杯生きる。
「西島、最期の願い聞いてくれねぇか」
「もちろん」
俺が微笑めば西島も幸せそうに微笑む。
こんな話してるのに優しく微笑むことができるのはきっと西島だけではないだろうか。