隣の席の魔法使い。
少しずつ涙が落ち着いてきた西島の頬の涙を優しく拭う。
そして西島といつもより近い距離でしっかりと目が合った。
涙を拭った手をそのまま頬に添える。
「いいか?」
「……うん」
主語がなくても話は進んでいく。
西島は真っ赤な顔して少しだけ上を向くと静かに目を閉じた。
本日何度目かの可愛いと愛おしいが溢れて溢れて止まらない。
そんな西島を一瞬足りとも見逃したくないと俺は目を閉じることなくゆっくりと西島に近づき、その唇に俺の唇を落とした。
一瞬。
本当に一瞬だった。
少し触れたあとゆっくりと俺の唇と西島の唇が離れていく。
それでもその一瞬は今まで感じたどの時間よりも濃厚で幸せなものだった。
「へへっ」
それは西島も同じだったようで恥ずかしそうにしていたが今まで見た笑顔の中で1番幸せそうに西島は俺に笑っていた。
ずっとその笑顔を守りたい。
けれどそれは絶対叶わない。
1番君の笑顔を守れないのは俺だから。
泣かせてしまうのも俺だから。
俺の人生のたった一つだけの心残りだ。
だからそんな俺を、
「恨んでいいよ、西島」
ごめんな。