隣の席の魔法使い。
飯塚の言葉を聞いた女子は顔色を失い、「すみませんでした!」と叫んでさっさと逃げてしまった。
……俺はあの女子にストーカーされていたのか。
「災難だったわね、青葉くん」
「あぁ、悪かったな、飯塚」
「いいのよこのくらい。優香ちゃんの為にも虫除けくらいやるわ。いや、あれは害虫駆除だったわね」
女子の去る姿を見届けた飯塚が労いの言葉を俺にかけてきたので、巻き込んでしまったことを謝罪するとにっこりと飯塚はおかしそうに笑った。
飯塚と俺はもちろん付き合ってなどいない。
俺が付き合っている認識がある相手は今も昔もそしてこれからの未来でさえも西島だけだ。
だけどこうして面倒なことが起こると飯塚は時には俺の彼女役、時には1番距離の近い女友達役などなどいろいろな役を受け持ち問題を解決してくれるのだ。
本人は全てこれは〝西島のため〟にしていることだと言う。
「青葉くんが望まない恋愛なんてする必要ない。いつまでも優香ちゃんを想っていればいい。むしろ青葉くんの為に死んでしまうほど青葉くんのことを愛していた優香ちゃんの想いが少しでも報われるべきなのよ」
いつか何故俺を助けるのか聞いた時に俺にそう言った飯塚の言葉。
それが飯塚の今の行動の答えなのだろう。