隣の席の魔法使い。
育ってきた境遇が境遇だっただけに私は遊園地は愚かこういった〝遊ぶ場所〟で一度も遊んだことがなかった。
友達と言える友達もいなかったし、たまたま行けることになった遊園地だったけど、本当はすごくすごく楽しみにしていた。
「穂乃果、実は絶叫苦手なんだよね……。だから穂乃果は乗れないの……」
ジェットコースターの乗り場まで来たところで穂乃果ちゃんが困ったようにみんなを見つめる。
だけど私には鋭い目付き。
こ、これは協力者として協力を求められている!
「む、無理に乗らなくてもいいよ!穂乃果ちゃん!私は……」
「そうだな、俺と西島が乗ってくるから飯塚は拓真と他見て回って来いよ」
「っ!?」
私が言いたかったことはそうではない。
私が言いたかったことは、私と岡崎くんで乗るから穂乃果ちゃんと青葉くんで他を回っておいでってことだった。
なのに、青葉くんは至極当然の事のように穂乃果ちゃんに岡崎くんと回るように提案する。
「えぇ、でも……」
穂乃果ちゃんは声こそ塩らしかったが、目が、私に向けられている目だけが、ものすごく鋭かった。
3枚におろしたろか、と言われてるような気がする。